桜がいつのまにか咲いた。ほんとうに「気がついたら」といった感じだ。
花冷え、というか、寒い中にまず梅が咲き、♪桜はまだかいな・・
などと蕾をながめ、花がさくのを心待ちする、じれったいところに、桜の風情がある。一昨日、界隈を散歩していたら、予告もなく桜が満開だったので、少し興ざめした。そのままお彼岸なので、義理の親父の墓をお参りし、姪っ子のゆずたちと、子どもビールで乾杯。
酒肴は「えーちゃんのカレーライス」だ。幼き子らには、元気をもらう。
あちらは、「これができるようになった」ということが多く、反対にこちとらは「これができなくなった」ということが多くなってくる。
昨日は、八郷に野菜を調達しにいって、いつもいく温泉に入る。
露天風呂から眺める筑波山に霞のように山桜が咲き始めている。
来週あたりが、見ごろだろう。この世ともあの世とも区別がつかないあたりで、うとうととそんなことを思い浮かべながら温泉に浸かる、というのが極楽だと思う。福島の原発の影響で、界隈の有機農家あたりの打撃が深刻的だ。TPPに参加するにあたり、打撃がまた追い打ちになる可能性もある。
個人的だけど、桜は京都が一番だと思う。
東山界隈、とくに野村美術館あたりを散歩しながら眺めるのがいい。
美術館の隣に、碧雲荘、という野村さんの別荘がある。広大な敷地に屋形船(中が茶室)が浮かぶ池があり、まわりを赤松などの木が植えてあり、そこに一本だけ桜、しかもしだれ桜が植えてある。その桜が咲く時は、まわりの東山が借景になり、そこに山桜が遠くかすんで見える。まさに桃源郷だ。
その風景を何度か見たおかげ、が、がために、か、その後、京都にはほとんどいかなくなった。
京都に「花ばさみ」の老舗がある。
「安重」という。安くはないけど、重くて、いいはさみだ。
京都はお寺の近くには、必ずおいしい豆腐屋があるけど、お城の近くには鍛冶屋がある。安重は二条城の近くで元禄13年に創業し、すぐに池の近くの坊さんに気にいられて、花ばさみを作りはじめたらしい。
京都の人たちは、「安重さんのはさみは、むっくりしてていいわ」なんていう。
包丁も花ばさみも、命あるものを、切る。のでその瞬間に、あいての命に感謝しながら切る、そしてその瞬間瞬間を楽しみながら、気品をもって、むっくり、というのが、ながくその地の華人たちをうならせてきたものなのだろう。
真剣に「道」を歩いていくのに、具わっていく道具。一如になるまで、大切に使いこなしていきたいものだ。
道具を大事にする人が、道を極めていく。
感謝・野村拝