第010話 『 銀ブラ 』

「銀座をブラブラする」という意味合いで使われているけど、本来は「銀座でブラジル」

というのが起源らしい。モボ(モダンボーイ)やモガ(モダンガール)たちが、ギンブラを楽しんだ。昔の珈琲専門店は「ブラジル」とか「サントス」みたいな名前が多かったような気がする。ぼくが始めて珈琲専門店というやつに入ったのは、昭和50年、新幹線が博多まで開通して、「男と女が出会う街」というキャッチコピーの地下街にできた「サンベレイ」というお店だった。

ブラジルを注文して、生まれてはじめて見た茶色のコーヒーシュガーをおそるおそる入れて、飲んだ。はっきりいって、おいしい、とは思わなかったが、大人の仲間入り、みたいな感慨はあった。そして、京都の大学にいくことになり、下鴨神社の糺の森近くにあった「からふねや」と運命的な出会いをし、珈琲道をひたすら歩んでいくことになる。

そして、上京して22年くらいコンピュータの会社を経営しながら、ギャラリーを営み、縁あって墨東の「長屋」に辿りつき、天真庵を結んで、「ほぼブラジル」という珈琲を通じて、いろいろな物語をまた、紡いでいける幸せを感じながら、毎日「下町ブラリ」を楽しんでいる。「一杯の珈琲」というのは、人を幸せにするキーワードである。いや有り続けてほしい。