昨日は「春画の朗読会」だった。最近、春画が世界で評判になっている。
墨田区はその代表選手みたいな北斎のゆかりの地であり、舞台になった遊郭などは、この界隈は枚挙にいとまなく存在している。まだまだ残り香もある艶冶なとこ。
夕方近所の齢(よわい)80のじいちゃんがそばを手繰りにきた。
そば前に「クロキリのそば焼酎割り」を3杯所望。ほんとうは糖尿病で毎日自分で注射をし、目も片方は失明、なんとか右目が効いて、かろうじておぼつかない足で歩いていて、家族や医者からの禁酒されているけど、「酒がなくてなんの人生」と意気軒高なじいちゃん。
途中で「はばかり」といって二階にヨタヨタと上っていった。
降りてきたら、「今日は素敵なライブがあるんだね」という。
トイレに貼ってあった春画の朗読会のチラシを、右目で読んだらしい。
「見えるじゃない」とからかうと、「まだスケベだから」だって。昔向島で芸者に教えてもらった句がよみがえる。
生きとし 生けるもの みなアレが好き
春画は、スケベな人ほど、大きく誇張された男女のアレばかりに目がいき、讃、というか、横に揮毫された文字にまで目が届かない人が多い。
もっとも江戸時代の文字を読み解くのはなかなか大変なことではあるが・・・
二部はそんな春画の横の文字を解読して、朗読する。
後家さんの家の蔵の二階に、掃除の手伝いにきた若い男。操(みさお)を信条にする後家さんを若い男がうしろからはがいじめをし、帯をほどき・・・いたす。よくある話である。
しかしながら、春画の奥方の表情を見ていると、男よりも目が生きていて、うれしそうで色っぽい。
ほんとうは、筆おろしをしてあげる、くらいの気持ちで誘ったのかもなんばん・・・こんな都都逸がある。
これも向島にあったお店の女将に教えてもらったものだ。「いいね」は、こんな都都逸にいってほしいね。
二階貸しましょ お望みならば 下も貸します 後家じゃもの
酩酊したおじいちゃんを、奥様が迎えにきた。
スケッチをやっていて、「船橋の海と舟を描いてきた」という。舟を題材にしたこんな都都逸もある。
この舟はあなたがのる舟 あなたの竿は 私がいくとき 借りる竿
束の間の人生、生きている間に、しなくてはならないことは、しておいたほうがいい。
感謝・野村拝