秋は酒。
牧水の歌が酒をますますうまくする。
白玉の歯にしみとおる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり
昨日は閉店前に「みかんくん」が蕎麦を手繰りにきた。
「最近、蕎麦屋で酒、にあこがれる」とのこと。
まだ30歳そこそこなのに、酒道大学の院生みたいなませたことをいう。
安岡章太郎の「父の酒」をすすめたら、すぐに読み、料理の手本は「檀流クッキング」で、梅干しも檀流、味噌は天真庵流で、サラリーマンをやらせておくのはもったいない若者である。
昨日は、梅酢でつくったみょうが、梅味噌など、梅料理を中心に酒肴をこしらえたので、いつもより酒量が多くなり、おまけに高田渡の「酒の飲みたい夜は」などをかけていたので、「昭和の蕎麦屋」よろしく、徳利が空になってカウンターにならんだ。
お流れを少しちょうだいしながら、こちらも、歯にしみとおる酒を堪能させてもらった。
旅は哲。酒も哲。
♪酒が飲みたい夜は 酒だけではない 未来へも口をつけたいのだ
日のあけくれ うずくまる腰や 夕暮れとともに しずむ肩
先週まで父が入院していた部屋は、我が母校・宗像高校の隣にある。
病院に見舞いにいく道すがら
後輩たちが「おはようございます」と挨拶してくれる。
部屋からは宗像四塚のひとつ「城山」(じょうやま)が見えた。
海賊と呼ばれた男、出光佐三翁もこよなく愛した山。
宗像高校のワンゲル部の訓練場でもあり、湧き水がうまい。
ときどきワンゲルの友達が汲んできてくれ、サイドボードにある父の酒(だるま)をくすね、水割りにした。
その部屋で、城山を見ながら孫たちと飲んだ「月桂冠」が最後の「父の酒」になった。
93歳。(入院する6月まで家では剣菱を飲んでいた。)
うちの墓は宮崎県延岡の城山(しろやま)の近くにある。
延岡城があったとこだ。来週に納骨に参る。
牧水の故郷でもあり こんな歌も残した。
さりげない日常を歌ったものだが、こころに染みる。
さすがだ。
なつかしき城山の鐘鳴りいでぬ 幼かりし日聞きしごとくに
天恩感謝・野村拝